税理士試験シリーズ「簿記論」。
第27回は、期末商品の評価方法のひとつ「売価還元法」を確認します。
「売価還元法」は、複数の種類の商品をグループにまとめ、
グループごとに原価を計算する方法です。
覚えることは少ないですが、確実に理解することが大切な論点。
落ち着いて、じっくりと取り組みましょう!
売価還元法とは
「売価還元法」は、売上原価の計算方法のひとつ。
当期の売上原価は、期首商品棚卸高(繰越商品)と当期仕入額の合計から
期末商品棚卸高を差し引いて計算するもの。
この「期末商品棚卸高」の算定のしかたが
「先入先出法」「平均原価法」「最終仕入原価法」といった
他の計算方法とは異なっていることがポイントです。
「先入先出法」「平均原価法」「最終仕入原価法」では
① 商品の種類ごとに払出単価を計算し、
② 払出単価に個数をかけて
期末商品棚卸高を計算します。
これに対して、「売価還元法」は
① 期末商品帳簿売価を把握し、
② 期末商品帳簿売価に原価率をかけて
期末商品棚卸高を計算するという方法です。
「売価還元法」で用いる期末商品棚卸売価と原価率は、
商品の種類ごとではなく、複数の種類の商品をまとめた商品のグループごとに把握します。
「売価還元法」は、取り扱う商品の種類が膨大になる業種(スーパーなど)で適用されます。
売価還元法の計算のしかた
売価還元法では
期末商品帳簿売価 × 原価率
の計算式で、期末商品棚卸高を計算します。
このときに使う原価率は、
(期首商品棚卸高)+(当期商品仕入高)
÷
(期首商品売価)+(当期商品仕入高+原始値入額)+(純値上額)-(純値下額)
の計算式で算出します。
この原価率の計算式は、
期首の商品在庫(原価ベース)と当期中に仕入れた商品の原価を
期首の商品在庫(売価ベース)と当期中に仕入れた商品の売価で割るという意味。
当期中に仕入れた商品の売価を出すために、
当期仕入高に対して原始値入額(最初に値付けするときに設定した利益の額)を加算し
そのあとの値上げや値下額も加減算しています。
棚卸減耗費の処理
売価還元法を採用しているときの棚卸減耗費の処理方法を確認しましょう。
上で見たとおり、売価還元法による計算の過程では、
まず、期末商品棚卸売価を把握します。
この期末商品棚卸売価について、帳簿売価と実地売価に差があると、
棚卸減耗が生じていることとなります。
したがって
期末商品帳簿売価 - 期末商品実地売価
の計算によって、売価ベースの棚卸減耗を計算したあと
棚卸減耗(売価ベース) × 原価率
の計算をすることで、原価ベースの棚卸減耗を把握し、これを棚卸減耗費に計上します。
期末商品帳簿売価は、問題文で直接提示されることもありますが
売価の合計額(原価率を計算するときの分母の額と同じ) - 当期売上高
の計算式によって、自分で求める場合もあります。
商品評価損の処理
続いて、売価還元法を採用しているときの商品評価損の処理方法を確認しましょう。
原則処理
原則は、ほかの評価方法を採用しているときと同じ。
すなわち
期末における正味売却価額が帳簿価額を下回っているときは、
差額を商品評価損に計上し、帳簿価額を正味売却価額まで減額します。
計算式は
商品評価損 = (期末商品実地売価×原価率) - 正味売却価額
です。
特例処理
原則処理のほかに、特例処理が認められています。
特例処理の方法は、売価還元法による原価率の計算式
(期首商品棚卸高)+(当期商品仕入高)
÷
(期首商品売価)+(当期商品仕入高+原始値入額)+(純値上額)-(純値下額)
の
分母の「純値下額」(上の式の緑マーカー部分)を除外して原価率を求め、
その原価率を使って算出した期末商品帳簿価額を
商品評価損を反映した帳簿価額とみなす、というもの。
すなわち、特例法を用いるときは、原価率を
(期首商品棚卸高)+(当期商品仕入高)
÷
(期首商品売価)+(当期商品仕入高+原始値入額)+(純値上額)
の計算式で求めるということになります。
分母から値下額を差し引かないので、
元の計算式よりも分母の額が大きくなり
算出される原価率が下がることから、
その原価率を使って求めた期末商品棚卸高も少なくなり
商品評価損を反映した額と同様にみなすことができるという考え方です。
おわりに
いかがでしたか?
売価還元法に関しては、すっきり理解できるまでとにかく何度も計算問題を解くことが大切。
計算のパターンがあるため、一度理解ができたら心配がなくなる分野です。
それでは、次回もおたのしみに。一緒にがんばっていきましょう!
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