【マイクロ法人】会社設立までにかかった費用(創立費)はどう処理する?仕訳の具体例もチェック

 法人を設立するためには、事前準備が必要です。

 定款の作成、登記の申請……。

 これらの過程で発生する様々な支払は、どのように会計処理をすればよいのでしょうか。

 法人設立より前に支払ったので、領収証は法人の名前になっていないけれど、経費にできるのでしょうか。

 当記事では、法人設立前にかかった費用(創立費)の会計処理について解説していきます!

この記事でわかること

設立前に支払った費用も経費にできる

 法人設立前に発生した支払を、「創立費」といいます。

 創立費は、たとえ領収証が法人の名前になっていなくても、経費に計上することができます。

 条件は、法人の設立のために支払ったものであること。また、法人が負担すべきものであること。

 具体例として、定款作成や登記申請のために司法書士や行政書士に支払った報酬、登録免許税、収入印紙代、法人印鑑の作成費用などがこれにあたります。

根拠法令等:法人税法2条24号、法人税法施行令14条1項1号

創立費の会計処理の手順は?

 創立費は、法人税の計算においては、「繰延資産」という無形資産の一種として扱われます。

 というのも、創立費は会社設立のための費用なので、支出の効果は、会社設立の初年度だけでなく、会社が存続しているかぎり、設立の翌年以降にも及びます。

 ですので、創立費の支出金額は通常の費用のように一括で差し引くのではなく、いったん法人の資産として計上し、支出の効果が及ぶ期間にわたって費用化(償却)していくという考え方がとられています。

 このため、創立費の会計処理は、①支払ったときの処理と、②期末の償却処理の二段階でおこないます

創立費を支払ったときの仕訳の方法は?【具体例】

 例えば、会社設立のために登録免許税(例:60,000円)を支払ったときの仕訳は、以下のとおりです。

(仕訳例) 

日 付借 方貸 方摘 要
(設立年月日)創立費
60,000円
役員借入金
60,000円
〇月〇日支払
登録免許税

 創立費の仕訳上の日付は、設立年月日とします。摘要欄に実際の支払日と内訳を記載しておくと、後で見返したときにわかりやすいのでお勧めです。

 借方の「創立費」は、資産の勘定科目です。したがって、この仕訳の時点では、創立費の金額は費用に計上されていません。

 貸方の「役員借入金」は、負債の勘定科目です。ここでは、代表者がポケットマネーでいったん立替払いをしたケースを想定しています。(※)

※法人の設立登記の時点では、資本金を仮の個人口座に振り込んだ状態になっているのが通常です。その口座から登録免許税などの創立費を直接支払った場合は、役員借入金ではなく、振り込んだ資本金の相手勘定とした資産の勘定科目【現金預金、預け金など】の減額として処理します。

創立費を償却(費用計上)するときの仕訳は?【具体例】

 創立費は、会社の会計処理において損金経理をした金額を限度に、法人税法上の損金にできるとされています。

 会社の会計処理の基となる企業会計基準では、創立費は支出時に一括で償却するか、設立から5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法で償却することとされています。

根拠法令等:実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い/中小企業の会計に関する指針

 ここでは、5年間の定額法で会計処理をおこなってみましょう。

日 付借 方貸 方摘 要
(初年度期末)創立費償却
12,000円
創立費
12,000円

 初年度の期末に、償却費の仕訳をします。

 創立費償却は、費用の勘定科目です。

 創立費60,000円を5年間(60か月)で償却するため、初年度(12か月)分にあたる12,000円を今期の費用として計上します。

(計算式:60,000円÷償却期間60か月×12か月=12,000円。初年度が12か月に満たないときは、その月数を基に計算します。)

 この仕訳をすることによって、支払時に資産として計上された創立費の金額のうち、当期に対応する金額が費用化され、償却費として当期の決算書上の損益に反映されることになります。

 また、貸方の創立費は、資産の勘定科目の減額です。翌年度以降も同様の処理を行ないます。

法人税の計算上は、償却費を翌期以降に持ち越すこともできる

 法人税法において、創立費は、会社の会計処理において損金経理をした金額を「限度に」、損金算入できる※とされています。

 (※法人税においては、費用に計上することを「損金算入」といいます。

 したがって、法人税の確定申告では、会計処理において創立費償却として経理した金額は、あくまで損金算入の「限度額」となり、個々の法人の判断で、その期の損金に算入しないこともできます。

 そして、その期の損金に算入しなかった金額は、翌期以降に持ち越すことが可能となっています。

根拠法令等:法人税法32条1・6項、法人税法施行令64条1項1号

法人税の節税メリットを確認しよう 

 これを利用して、法人税を節税できる場合がありますので、確認しておきましょう。

 たとえば、設立初年度は赤字で、2期目に所得が多くなるケース。

 上記で説明した創立費償却の具体例では、会計処理上は、設立初年度と2期目にそれぞれ創立費償却12,000円が損金として計上されます。

 しかし、法人税の確定申告においては、設立初年度に損金に算入せず、2期目に24,000円を算入するという処理が認められているのです。

 所得が多くなる年度に、より多くの償却費を計上することで、法人税の金額を少なくすることができます。

 なお、法人税の確定申告書を作成する際のポイントは、次の2点です。

① 「決算書上、損金経理をした額」と「法人税の計算上、損金算入する額」に差額があるときは、申告書別表4の加算・減算の欄にその差額を記載することで、決算書上の損益を法人税法上の課税所得にあわせる

② 創立費の償却に関する事項を、申告書別表16(6)の「2 一時償却が認められる繰延資産の償却額の計算に関する明細書」欄に記載する

おわりに

 いかがでしたか?

 会社設立の前に支払った様々な費用も、法人税法上の損金に算入することができます。

 設立前だからといって油断せず、領収証などは必ず残しておくようにしましょう!

 当記事が皆様のお役にたてるとうれしいです。

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