税理士試験シリーズ「簿記論」。
第21回は、収益認識基準に沿った会計処理について確認します。
現行の収益認識基準は、2021年4月から大企業や上場企業に適用されている会計基準。
「新収益認識基準」と呼ばれることもあります。
ここでは、試験に影響する論点に絞って、内容を押さえておきましょう。
収益認識の5つのステップ
収益認識基準では、5つのステップに沿って、収益を認識します。
(ざっと内容を理解しておきましょう。暗記する必要はありません)
ステップ1 | 顧客との契約を識別する |
ステップ2 | 契約における履行義務を識別する |
ステップ3 | 取引価格を算定する |
ステップ4 | 契約における履行義務に取引価格を配分する |
ステップ5 | 履行義務を充足した時に、または充足するにつれて収益を認識する |
変動対価があるときの会計処理
ステップ3(取引価格を算定する)に関係する論点です。
変動対価とは、顧客と約束した対価のうち変動する可能性がある部分のこと。
変動対価は、「収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分」に限り、取引価格に含めます。
顧客から受け取った対価、または受け取ることとなっている対価(売掛金など)の一部を
顧客に返金することが見込まれる場合は、
その部分の額を、「売上」ではなく「返金負債」の勘定科目で処理します。
(仕訳例)商品を100円で販売したが、そのうち5円を割戻しする可能性が高いと見込まれる場合
借 方 | 貸 方 |
売掛金 100円 | 売 上 95円 |
返金負債 5円 |
取引価格の配分の方法
ステップ4(契約における履行義務に取引価格を配分する)に関係する論点です。
ひとつの契約のなかに履行義務が複数存在する場合
(たとえば、機械の販売と保守サービスなど)、
取引開始日における各履行義務の独立販売価格の比率に基づいて
各履行義務に取引価格を配分します。
また、契約の取引価格が
契約に含まれる各履行義務の独立販売価格の合計額を下回っているときは、
契約の全体に対して値引きがあったものと考え
値引き額を各履行義務の独立販売価格の比率に基づいて配分します。
債権の分類(顧客との契約から生じた債権/契約資産)
ステップ5(履行義務を充足した時に、または充足するにつれて収益を認識する)に関係する論点です。
履行義務を充足して収益を認識すると、売上を計上します。
売上にかかる債権のうち無条件に受け取ることができるもの(たとえば売掛金)を、
収益認識基準では「顧客との契約から生じた債権」と呼びます。
一方、履行義務を充足して収益を認識し、売上を計上しても、
その売上計上の時点においては、売上にかかる債権に条件が付されているケースがあります。
たとえば、2つの商品(A・B)の両方を引き渡すことが対価の支払い条件になっている場合。
A商品を引き渡した時点で、A商品にかかる履行義務を充足し、A商品の売上を計上しますが、
A商品の売上にかかる債権には、B商品の引き渡しという条件が付されています。
この場合、A商品を引き渡した時点では、
売上にかかる債権を、売掛金ではなく「契約資産」として処理します。
(仕訳例)上の例で、A商品を引き渡したとき
借 方 | 貸 方 |
契約資産 〇〇円 | 売上(※A商品の分) 〇〇円 |
(仕訳例)後日、B商品を引き渡したとき
借 方 | 貸 方 |
売掛金 ××(=〇〇+●●)円 | 契約資産 〇〇円 |
売上(※B商品の分) ●●円 |
おわりに
いかがでしたか?
今回の範囲では、特徴的な勘定科目である
返金負債(返金すると見込まれる対価をいったん計上するときに使う)
契約資産(条件付きの売上債権を計上するときに使う)
の内容を、それぞれ覚えておくとよいでしょう。
取引価格の配分の部分は、感覚的に理解しておけば覚える必要はなさそうですよね。
では、次回もぜひご覧くださいね。
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