税理士試験シリーズ「簿記論」。
第13回は、リース取引の処理を取り上げます。
リース取引は、暗記よりも、内容を理解することが大切。
身構える必要はありませんので、さくっと進めてしまいましょう。
では、始めましょう!
リース取引の種類
リース取引は、
・ファイナンス・リース取引
・オペレーティング・リース取引
の2種類に分けられます。
さらに、ファイナンス・リース取引は
・所有権移転ファイナンス・リース取引
・所有権移転外ファイナンス・リース取引
の2種類に分けられます。
非常にざっくりとしたイメージでいうと、
「所有権移転ファイナンス・リース」は、ほとんど売買と一緒
「オペレーティング・リース」は、単なる貸し借りに近い
残った「所有権移転外ファイナンス・リース」は上記2つの中間
という感じです。
ファイナンス・リース取引とは
ファイナンス・リース取引の要件
ファイナンス・リースは、
「解約不能」と「フルペイアウト」の2つの要件を満たすリース取引です。
「フルペイアウト」に該当するかの判断は、具体的には
① 解約不能期間のリース料の総額(現在価値換算)が
見積現金購入価額のおおむね90%以上であること
② 解約不能期間が、耐用年数のおおむね75%以上であること
のどちらかを満たしていればOKとされています。
「所有権移転」と「所有権移転外」の区別
リース期間が終了した後に
所有権が移転する契約であれば「所有権移転ファイナンス・リース」
所有権が移転しない契約であれば「所有権移転外ファイナンス・リース」
です。
所有権移転ファイナンス・リースには、
所有権移転条項が付されている契約のほか
・「割安購入選択権」が付されている契約 あるいは
・「リース資産が借り手の特別仕様となっているもの」
も含まれることに注意します。
ファイナンス・リース取引の会計処理
ファイナンス・リース取引の仕訳をするときは、
借り手が貸し手から資金を借り入れ
借入資金で固定資産を購入し
代金を分割払いした
と考えます。
したがって、会計処理は、固定資産の売買の処理に準じて行ないます。
リース開始時の仕訳
借方に「リース資産」勘定を計上します。
貸方には、同額の「リース債務」勘定を計上します。
計上する額は、「リース料の総額から利息相当額を除いた額」です。
(仕訳例)
借 方 | 貸 方 |
リース資産 ××円 | リース債務 ××円 |
リース資産に計上する額の算定
リース資産の計上額は
「リース料の総額から利息相当額を除いた額」とされています。
考え方としては、リース資産の現在価値を計上するということ。
計上額は、具体的には
① 所有権移転ファイナンス・リースで貸し手の購入金額がわかっているときは、
「貸し手の購入金額」
です。
② 所有権移転外ファイナンス・リースで貸し手の購入金額がわかっているときは、「貸し手の購入金額」か、「リース料総額の割引現在価値」のいずれか低いほうの額
です。
③ 貸し手の購入金額がわかっていないときは、「見積現金購入価額」または「リース料総額の割引現在価値」のいずれか低いほうの額(所有権移転の有無にかかわらず)
とします。
リース料総額の割引現在価値を計算するときの割引率は、
貸し手の計算利子率がわかっていれば、貸し手の計算利子率を使います。
貸し手の計算利子率がわからないときは、借り手の追加借入利子率を使います。
リース料支払い時の仕訳
上で説明したように、ファイナンス・リースでは
「貸し手から資金を借りて、リース資産を購入し、代金の分割払いをしている」
と考えて仕訳をします。
このため、借り手が貸し手に対して支払うリース料は
・借りた資金の元本返済の部分 と
・借りた資金の利息の部分
の2つに分けられます(住宅ローンと同じです!)。
したがって、支払ったリース料のうち
元本返済の部分は「リース債務」勘定を減額
利息の部分は「支払利息」勘定で費用を計上
する処理を行ないます。
(仕訳例)支払ったリース料10,000円のうち、利息部分が3,000円・元本部分が7,000円の場合
借 方 | 貸 方 |
支払利息 3,000円 | 現 金 10,000円 |
リース債務 7,000円 |
元本返済部分と利息部分の計算方法
一般的に、利息法という方法で計算します。
まず、リース債務の残高に、一定の利率を掛けます。
この計算で出た金額が、利息部分の金額。
リース料から、この利息部分の金額を差し引いた残りが、元本返済部分の金額です。
利率は、問題文で示されるものを使用します。
(リース料総額の割引現在価値がリース資産の当初計上額と同じになる利率です)
なお、リース開始時に1回目のリース料を支払う契約になっているときは、
1回目のリース料のみ、全額を元本返済部分として処理します。
(1回目のリース料支払い時点では、時間が経過しておらず利息が発生していないため)
決算時の仕訳(減価償却)
ファイナンス・リースでは、リース資産を購入したものと考えて仕訳をしているため
リース資産も、通常の固定資産のように、減価償却の対象になります。
所有権移転リースの場合は、
自己所有の固定資産と全く同様に減価償却をします。
所有権移転外リースの場合は、
リース期間が終了したあとに資産を返却する前提であることから
「残存価額=0円」、「耐用年数=リース期間」として、減価償却をします。
オペレーティング・リース取引とは
オペレーティング・リース取引とは、ファイナンス・リース取引の要件に該当しないリース取引のことです。
オペレーティング・リース取引の会計処理
オペレーティング・リース取引は、通常の賃貸借の取引と同様に処理します。
したがって、リース料を支払ったときは、「支払リース料」の勘定科目で費用計上します。
また、決算時に既経過部分のリース料があるときは、
貸方を「未払リース料」または「未払費用」(負債)の勘定科目として、
支払リース料を見越し計上します。
反対に、前払い部分のリース料があるときは、
借方に「前払リース料」または「前払費用」の勘定科目で資産計上します。
おわりに
いかがでしたか?
次回は、リースバック取引を取り上げます。
(リース取引は、計2回で終了です!)
ぜひ、引き続きご覧くださいね。
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