【税理士試験/簿記論】基礎編⑫ 有形固定資産(5:圧縮記帳)

税理士試験シリーズ「簿記論」。

第12回は、圧縮記帳の処理を取り上げます。

圧縮記帳については、暗記するのではなく

「しっかりと理解する」ことが大切です。

逆にいえば、理解さえすれば、覚えることはとても少ないです!

では、始めましょう~!

この記事でわかること

圧縮記帳とはなにか

圧縮記帳とは、国庫補助金や保険金などに対する課税を繰り延べるための

税法上の制度をいいます。

圧縮記帳の対象は、

国庫補助金や保険金などを使って取得した有形固定資産です。

少し詳しい説明はこちら(読み飛ばし可)

国庫補助金や保険金などに対して、収入時に課税した場合

国庫補助金や保険金が税金分目減りして、

当初の目的である「国庫補助金や保険金を使って固定資産を購入する」

ことができなくなってしまいます。

このため、税法では、収入時に全額課税するのではなく

企業が国庫補助金などを使って固定資産を購入したあとに、少しずつ課税する

「課税の繰延べ」の制度をとっています。

圧縮記帳は、この「課税の繰延べ」をするための手段です。

圧縮記帳の方法

直接減額方式と、積立金方式の2種類があります。

直接減額方式の会計処理

直接減額方式は、国庫補助金などを使って取得した固定資産の取得価額を

国庫補助金の金額分減額する方式です。

たとえば、国庫補助金100万円を使用して、500万円の固定資産を取得したときの一連の仕訳は、次のとおりです。

① 補助金受領時

借 方貸 方
現 金
100万円
国庫補助金収入
100万円

(このままでは、国庫補助金100万円が収入として課税される)

② 固定資産取得時

借 方貸 方
固定資産
500万円
現 金
500万円

③ 決算時

借 方貸 方
固定資産圧縮損
100万円
固定資産
100万円

この処理によって、

決算時に計上した「固定資産圧縮損」と国庫補助金収入が相殺され

当期において、国庫補助金収入に課税されないこととなります。

かわりに、固定資産の取得価額が補助金と同額減額(500万⇒400万円)されているため

毎期の減価償却費は、圧縮記帳をしない場合よりも少なくなります。

積立金方式の会計処理

積立金方式は、国庫補助金等を「圧縮積立金」として積み立て

毎期の決算時に減価償却費の計上とあわせて「圧縮積立金」の取崩し益を計上する方式です。

たとえば、国庫補助金100万円を使用して、500万円の固定資産を取得したときの一連の仕訳は、次のとおりです。

① 補助金受領時

借 方貸 方
現 金
100万円
国庫補助金収入
100万円

(このままでは、国庫補助金100万円が収入として課税される)

② 固定資産取得時

借 方貸 方
固定資産
500万円
現 金
500万円

③ 決算時

借 方貸 方
繰越利益剰余金
100万円
圧縮積立金
100万円

(国庫補助金収入と同額の圧縮積立金を計上 ※初年度の決算時のみ)

借 方貸 方
圧縮積立金
20万円
繰越利益剰余金
20万円  
減価償却費
100万円
減価償却累計額
100万円

(初年度以降、毎期の決算時に減価償却費に応じて圧縮積立金を取り崩す

(上記の金額は、5年で償却する場合の例)

積立金方式に税効果会計を適用するときの処理

積立金方式を採用する場合、課税の繰延べ額を考慮しない金額で

固定資産の取得価額が計上された状態となっています。

よって、毎期の減価償却費は課税の繰延べ額を考慮しない状態で計算され、

圧縮積立金の取崩しによる税法上の加算調整をおこなう必要があります。

これは、繰延税金負債(将来加算一時差異)が生じている状態ですので、

税効果会計を適用する必要があります。

決算時① 圧縮積立金の計上時

(上記のケースで、法定実効税率が40%の場合の例)

借 方貸 方
法人税等調整額
40万円
繰延税金負債
40万円
繰越利益剰余金
60万円
圧縮積立金
60万円

国庫補助金の受領額100万円のうち、

将来的に法人税等として納付する部分の金額を「繰延税金負債」、

残りの金額を「圧縮積立金」として計上します。

決算時② 圧縮積立金の取崩し時

(5年で償却する場合の例)

借 方貸 方
繰延税金負債
8万円
法人税等調整額
8万円
圧縮積立金
12万円
繰越利益剰余金
12万円

※ 実際の問題では、上記の決算時①②の仕訳(計上と取崩し)を合算して回答する場合があります。

おわりに

いかがでしたか?

有形固定資産の論点は、今回でひとまず終了です!

おつかれさまでした。

次回からは、リース会計を取り上げます。

お楽しみに!!

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