【税理士試験/簿記論】基礎編⑥ デリバティブ取引(1:種類と会計処理)

税理士試験シリーズ「簿記論」!

第6回は、「デリバティブ取引」を取り上げます。

名前だけで難しそうな響き……

でも、意味さえ理解できれば、仕訳や計算は難しくないのです。

気負わずに学習していきましょう。

この記事でわかること

デリバティブ取引の種類は3つ

デリバティブ取引の種類は、大きく分けて次の3つです。

1 先物取引

2 スワップ取引

3 オプション取引

デリバティブ取引の期末評価は「時価」

デリバティブ取引の貸借対照表価額は、「時価」です。

評価差額は当期の損益に計上します。

先物取引の会計処理

先物取引とは、将来のある時期に、ある商品を、決まった金額で受け渡すことを約束する取引です。

契約時の処理

先物取引では、契約時に証拠金を差し入れます。

差し入れた証拠金を、「先物取引差入証拠金」の勘定科目で計上します。

(仕訳例)

借 方貸 方
先物取引差入証拠金
××円
現 金
××円

期末の処理

先物取引から生じている債権(いわゆる含み益)または債務(いわゆる含み損)を時価評価し、

「先物取引差金」の勘定科目で計上します。

評価差額は「先物損益」の勘定科目で計上します。

(仕訳例)※評価差額がプラスの場合

借 方貸 方
先物取引差金
××円
先物損益
××円

決済時の処理

反対売買により決済し、利益が生じていれば差額を受領。損失が生じていれば差額を支払います。

利益または損失は、「先物損益」の勘定科目で計上します。

契約時に差し入れた証拠金が返還されるため、差し入れ時の反対仕訳をします。

(仕訳例)※決済差額がプラスの場合

借 方貸 方
現 金
××円
先物損益
××円
現 金
××円
先物取引差入証拠金
××円

スワップ取引の会計処理

スワップ取引とは、将来のキャッシュフローを交換する取引をいいます。

代表的なものは、変動金利と固定金利を交換する取引(金利スワップ取引)です。

契約時の処理

スワップ取引では、先物取引のような証拠金の制度はありません。

したがって、契約時に会計処理は発生しません。

利払時の処理

金利スワップ取引では、原則として、金利スワップ取引による受払いの「純額」を

「支払利息」または「受取利息」に計上します。

(注)問題文に指示がある場合は、金利スワップにより生じた損益を「金利スワップ差損」または「金利スワップ差益」として計上することがあります。

(仕訳例)変動金利受取・固定金利支払の金利スワップ取引。変動金利による受取利息400円、固定金利による支払利息500円のとき

借 方貸 方
支払利息
100円
現 金
100円

ポイント 金利スワップ取引はどんな場面で使うのか

たとえば企業が変動金利で借り入れをしている場合、変動金利の上昇リスクが気になります。

ここで、【変動金利受取・固定金利支払】の金利スワップ取引を行なうと、

変動金利が上昇したとしても、

借入先に支払うべき変動金利を金利スワップ取引により受け取ることができるため

企業は変動金利の上昇を気にせず、

金利スワップ取引により支払う固定金利を負担するだけでよいことになります。

このように、金利スワップ取引は金利変動リスクを回避するために活用されます。

期末の処理

金利スワップ取引の価値を時価評価し、

「金利スワップ資産」または「金利スワップ負債」の勘定科目で計上します。

評価差額は、「金利スワップ差損益」の勘定科目で計上します。

(仕訳例)※評価差額がプラスの場合

借 方貸 方
金利スワップ資産
××円
金利スワップ差損益
××円

なお、一定の条件を満たしたときは、期末の時価評価が不要となり、仕訳も不要です(特例処理)

オプション取引の会計処理

オプション取引とは、将来の「買う権利」または「売る権利」を売買する取引をいいます。

「買う権利」を「コール・オプション」、

「売る権利」を「プット・オプション」と呼びます。

購入時の処理

オプションを購入したときは、オプション料(購入代金)を支払います。

先物取引やスワップ取引と異なり、契約時にオプションの価値(購入代金と同額)が生じます。

購入代金を取得価額として、「オプション資産」の勘定科目を計上します。

(仕訳例)

借 方貸 方
オプション資産
××円
現 金
××円

期末の処理

オプション資産(「建玉」とも呼びます)を時価評価し、

評価差額を「オプション損益」の勘定科目で計上します。

(仕訳例)※評価差額がプラスの場合

借 方貸 方
オプション資産
××円
オプション損益
××円

権利行使時の処理

前提として、購入したオプションは、「権利行使によって利益が出る」ときのみ権利行使する、という点を押さえておきましょう。

権利行使によって損失が発生するときは、権利を放棄します。

権利を放棄したときの処理

権利を放棄した場合の会計処理を先に確認します。

この場合、取得価額で計上していた「オプション資産」の価値は権利放棄によって0になり、同額がオプション損益(損失)に計上されます。

(仕訳例)

借 方貸 方
オプション損益
××円
オプション資産
××円

権利を行使したときの処理

次に、権利を行使した場合の会計処理を確認していきましょう。

たとえば、

【130円/ドル】の権利行使価額

【1,000ドル】買う

という内容の通貨オプションを、オプション料2,000円で購入していたケースを考えてみましょう。

権利行使期限における為替相場が、仮に【135円/ドル】となっていた場合、

権利を行使して【130円/ドル】でドルを買うと、

1ドル当たり5円】、【1,000ドルで5,000円】の利益を得ることができます。

ただし、オプションの購入代金が2,000円かかっているため、オプション取引によって得られた利益は

【5,000円-2,000円=3,000円】となります。

これを仕訳で表すと、次のとおりです。

借 方貸 方

現 金
5,000円
オプション資産
2,000円
オプション損益
3,000円

おわりに

いかがでしたか?

次々と新たな勘定科目が登場しますので、記憶があやふやになりがちな分野かもしれません。

定期的に見直して、知識を定着させていきましょう。

次回は、「ヘッジ会計」をお届けします。

こちらも是非ご覧くださいね。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

この記事でわかること