【税理士試験/簿記論】基礎編⑤ 有価証券について(3:保有目的の変更)

税理士試験シリーズ「簿記論」。

第5回は、有価証券の保有目的を変更したときの処理を取り上げます。

有価証券の論点も、あと少しで終了です!

では、始めていきましょう。

この記事でわかること

売買目的有価証券から変更したとき

売買目的有価証券を子会社・関連会社株式またはその他有価証券に変更したときは、

時価評価して評価損益を計上した上で、科目を振り替えます。

(仕訳例)期首帳簿価格9,000円(振替時時価10,000円)の売買目的有価証券を子会社株式に変更したとき

借 方貸 方

関係会社株式
10,000円
有価証券
9,000円
有価証券運用損益
1,000円

満期保有目的の債券から変更したとき

満期保有目的の債券を売買目的有価証券またはその他有価証券に変更したときは、

償却原価法による償却をして償却額を計上した上で、科目を振り替えます。

(仕訳例)期首帳簿価額9,000円(振替時償却原価10,000円)の満期保有目的の債券を売買目的有価証券に変更したとき

借 方貸 方

有価証券
10,000円
投資有価証券
9,000円
有価証券利息
1,000円

子会社・関連会社株式から変更したとき

子会社・関連会社株式を売買目的有価証券またはその他有価証券に変更したときは、

帳簿価額で、科目を振り替えます。

「評価替えは行わない」ことがポイントです。

(仕訳例)期首帳簿価額9,000円(振替時時価10,000円)の子会社株式をその他有価証券に変更したとき

借 方貸 方
投資有価証券
9,000円
関係会社株式
9,000円

その他有価証券から変更したとき

その他有価証券を他の保有目的に変更したときは、変更後の保有目的によって、処理の方法が異なります。

売買目的有価証券に変更したとき

その他有価証券を売買目的有価証券に変更したときは、

時価評価して評価損益を計上した上で、科目を振り替えます。

「純資産直入法は使わない」ことがポイントです。

(仕訳例)期首帳簿価額9,000円(振替時時価10,000円)のその他有価証券を売買目的有価証券に変更したとき

借 方貸 方

有価証券
10,000円
投資有価証券
9,000円
投資有価証券運用損益
1,000円

子会社・関連会社株式に変更したとき(原則)

その他有価証券を子会社・関連会社株式に変更したときは、

原則として、帳簿価額で、科目を振り替えます。

(仕訳例)期首帳簿価額9,000円(振替時時価10,000円)のその他有価証券を関連会社株式に変更したとき

借 方貸 方
関係会社株式
9,000円
投資有価証券
9,000円

子会社・関連会社株式に変更したとき(部分純資産直入法かつ前期末評価損の場合)

その他有価証券を子会社・関連会社株式に変更した場合で、

・部分純資産直入法を採用しており

かつ

・前期末に評価損を計上しているときは、

前期末の時価で、科目を振り替えます。

この処理は、当期首におこなった洗替法による振戻しの反対仕訳をして、当期首に計上した投資有価証券運用損益を相殺するという意味を持っています。

例えば、前期末時点でその他有価証券の帳簿価額が10,000円、時価9,000円であった場合、

前期末に投資有価証券の評価損1,000円を計上しているため、

当期首に1,000円の振戻し処理を行ない、帳簿価額を10,000円に戻しています。

(当期首・振戻し処理の仕訳例)

借 方貸 方
投資有価証券
1,000円
投資有価証券運用損益
1,000円

上記のその他有価証券を当期中に子会社・関連会社株式に変更したときは、

当期首の仕訳の反対仕訳をして、投資有価証券の運用損益を相殺した上で、

前期末の時価である9,000円で、関係会社株式に振り替えることになります。

(当期中・保有目的変更時の仕訳例)

借 方貸 方
関係会社株式
9,000円

投資有価証券
10,000円
投資有価証券運用損益
1,000円

おわりに

いかがでしたか?

3回に分けてお届けしてきた有価証券の論点も、ひとまずこれで終了です!

有価証券の全体像をつかむために、1~3回をざっと見直していただくのもお勧めです。

頭の中が整理されていく感覚を大切に、学習を続けていきましょう~。

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