【個人事業】商品を自分で使ったときの会計処理は?家事消費(自家消費)の仕訳をチェック

 「商品をお客さまに販売せずに、自分で使うことにした」

 個人事業では、よく起こるケースです。

 このとき、事業の仕訳はどのようにしたらよいでしょうか?

 所得の計算にどのような影響がでるのでしょうか?

 当記事では、個人事業をしているとひんぱんに起こる「家事消費」の会計処理について、シンプルにわかりやすく解説します!

この記事でわかること

家事消費とは?

 家事消費とは、もともと販売するつもりだった商品を、販売せず自分のために使うこと

 たとえば次のようなケースが家事消費にあたります。

・ 販売するつもりで仕入れたアクセサリーを、気に入ったので自分で使うことにした。

・ 販売するつもりで仕入れたお菓子だが、賞味期限がせまってきたので自分で食べることにした。

 また、家族が使ったり、友人にプレゼントした場合も、家事消費と同じ処理が必要です

家事消費は、事業の収入に計上する

 家事消費は、確定申告の事業所得を計算する際には、収入金額(売上金額)として扱われます。

 したがって、家事消費をしたときは、その商品の金額を売上に計上します。

 「販売せずに自分で使っただけなのに、売上とは?」と、違和感を覚えるかたもいらっしゃるかもしれません。

 これは、事業主である自分がプライベートの自分に商品を販売した、と考えるとイメージしやすいです。

 このとき、複式簿記の場合の仕訳は、

事業主貸 〇〇円 / 家事消費 〇〇円

となります。

 借方の「事業主貸」は、資産の勘定科目です。

 事業主「貸」とは、事業主である自分がプライベートの自分に商品を販売したが、代金を受け取っていないので、事業主としての自分はプライベートの自分に対して貸しがある、という意味。

 貸方の「家事消費」は、収益の勘定科目です。

 家事消費は、最終的に青色申告決算書に記入するときは、通常の売上と合算して収入金額の欄に記載しますが、仕訳の段階では、通常の売上とは別に固有の勘定科目を設定しておきましょう。

 家事消費は、通常の売上と異なり実際に代金が入ってくるわけではありません。にもかかわらず通常の売上と一緒に計上してしまうと、後から見たときに事業の実情を把握しにくくなってしまいます。

 また、税務調査などで「家事消費は計上していますか?」と尋ねられたときに、きちんと計上しているということを説明できるようにする意味もあります。

売上に計上する家事消費の金額はいくら?

 次に確認すべきは、家事消費を売上に計上するときの金額です。

 家事消費は、実際に売上代金をもらうわけではありません。

では、0円でいいのでしょうか?

家事消費は、通常販売価格の70%(ただし、仕入金額を下回らない金額)を計上する

 家事消費をしたときは、その商品の通常販売価格の70%の金額を売上に計上すればよいとされています。

 ただし、その商品の仕入価格を下回る金額とすることはできません。

 また、その金額で帳簿(仕訳)を記載していることが要件となっています。

根拠法令等:所得税法基本通達39-2

 これは、どういうことでしょうか。具体例で見ていきましょう。

例1

 たとえば、仕入価格800円、通常販売価格1,000円の商品を自分で使うことにした場合を考えてみます。

 通常販売価格の70%、すなわち1,000円×70%=700円では、仕入価格である800円を下回っています。

 したがって、この場合は700円ではなく、仕入価格である800円を売上に計上します。

 このときの仕訳は、

事業主貸 800円 / 家事消費 800円

となります。

例2

 次に、仕入価格500円、通常販売価格1,000円の商品を自分で使うことにした場合を見てみましょう。

 通常販売価格の70%、すなわち1,000円×70%=700円は、仕入価格の500円を上回っています。

 したがって、700円を売上に計上します。

 このときの仕訳は、

事業主貸 700円 / 家事消費 700円

となります。

まとめ

 いかがでしたか?

 事業の商品を自分で消費したときは、家事消費として売上に計上します。

 家事消費の処理をしなかった場合、売上が計上漏れになり、結果として確定申告の所得や税額が本来より少なく計算されます。

 税務調査などで誤りを指摘されると、本来かかるはずだった税額にプラスして、加算税や延滞税といったペナルティ的な税金がかかることも。

 家事消費の計上漏れは、個人事業ではひんぱんに起こる誤りのひとつ。

 会計処理が特殊なため、処理のしかたを知らなければ、誤りに直結してしまうのです。

 悪気はないのに、単に処理のしかたを知らなかったというだけで、本来かからなかった税金がかかってしまうのは、とてももったいないこと。

 この機会に、ご自身の事業のなかに家事消費にあたりそうなものがないか、確認してみると安心ですね。

 当記事が事業主のみなさまのお役にたてると幸いです!

参考 家事消費の考え方について

 ところで、なぜ家事消費は、0円とか、仕入金額より少ない金額で計上してはいけないのでしょうか?

 これは、仕入金額より少ない金額で計上すると、家事消費をすることで事業の赤字が計上されることになるから。 

 たとえば、1,000円の商品を自分で使い、家事消費の売上を0円で計上した場合を考えてみます。

 0円の売上に対して売上原価が1,000円計上されることになり、家事消費によって実際には赤字が発生したわけではないのに、事業の所得の計算上1,000円の赤字が発生してしまいます。

 お店のものを自分で使えば使うほど多くの赤字を発生させることができて、事業所得を少なくできる(=税額を減少なくできる)というのは、不平等でおかしな話なので、仕入金額より少ない金額で計上することは禁止しているというわけです。

 また、通常販売価格の70%以上で計上するという点については、事業主である自分がプライベートの自分に商品を販売するときも、本来は通常販売価格と同じ額で計上すべきという考え方が根本にあるうえで、実際代金をもらっているわけではないので、70%までなら通常販売価格より少なくしても認めましょう(でもきちんと帳簿を付けてね)、という考え方から決められています。

 

 

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