マイクロ法人を設立するメリット・デメリット

 資産形成が進み、サイドFIREが現実的になってきたとき浮上するのが、「退職後の仕事をどのような形態で行うか」という問題。

 当記事では、退職後にフリーランスで仕事をする場合に考えられる2つの選択肢について、メリット・デメリットを考察します。

この記事でわかること

個人事業か、マイクロ法人設立か

 独立起業を目指す方が勤務先を退職し一人で起業する場合、起業形態として2つの選択肢が考えられます。

 その選択肢とは、個人事業、そしてマイクロ法人設立

 この記事では、それぞれのメリット・デメリットを、シンプルに分かりやすく解説します!

1-1 個人事業のメリット

 個人事業主として起業する場合のメリットは、なんといっても、事務手続きが簡単なこと。

具体的には、次の①と②を行います。

 ① 税務署に個人事業の開業届出書を提出(税金の手続き)

  ※ 同時に青色申告の承認申請書を提出しておくと、税金の計算が有利になります。

 ② 市役所で国民年金と国民健康保険の加入手続きをする(年金と健康保険の手続き)

 開業のタイミングでは、この2つを忘れずにしておけば大丈夫

 開業後は、税金については税務署へ毎年の確定申告を。

 年金と健康保険は、市役所からの通知にしたがい、国民年金保険料と国民健康保険料を支払います。

 なお、配偶者などの家族が会社勤めをしており厚生年金保険に加入している場合は、配偶者などの扶養に入ることも検討しましょう(収入要件などを満たす必要があります)。

1-2 個人事業のデメリット

 個人事業として起業する場合に特に注意しておきたいのが、国民健康保険料

 前年の所得に基づいて計算されるため、退職の翌年は高額となりがちです。

 例えば、退職直前の給与収入が700万円/年の場合、退職翌年の国民健康保険料は、年間70万円程度。

 (40歳以上の例。自治体によって金額が異なるため、詳しくは自治体㏋などを確認してください。

 退職の翌年には、前年の所得に基づいて計算される税金として住民税も発生しますので、これらの納付資金を前もって確認しておく必要があるでしょう。

 退職前の勤務先に健康保険の任意継続の制度がある場合は、そちらに加入することが有利になる場合も。勤務先の制度も、退職する前にぜひ確認しておきましょう。

2-1 マイクロ法人設立のメリット

 マイクロ法人を設立するメリットのひとつは、退職翌年の健康保険料を軽減できること。

 個人事業主が国民健康保険に加入するのに対して、法人を設立した場合は原則として厚生年金保険に加入することになります。

 厚生年金保険では保険料が月々の給与に基づいて計算されるため、代表者の給与を低額にとどめておくことで、月々の保険料を抑えることができます。

 現実的にも、起業初期は収入が安定しないケースも多く、代表者の給与を低めに設定するのは自然なこと。

 たとえば月額給与が63,000円までの金額であれば、保険料は健康保険と厚生年金を合わせて毎月23,000円弱。年間に換算すると27万円程度となります。(40歳以上の例。自治体によって異なります。)

 また、法人代表者という肩書は、個人事業主と比べて一般的に社会的な信用が得やすい場合も。

 厚生年金に加入することで、個人事業主として国民年金に加入する場合より将来的に受給できる年金額が多くなる点もメリットといえます。

2-2 マイクロ法人設立のデメリット

 法人を設立する場合のデメリットのひとつは、事務手続きの煩雑さ

 マイクロ法人を設立する場合、設立時の事務手続きを簡便にし、また費用を抑える観点から、法人形態は「合同会社」とすることが多くなっています。

 しかしながら、合同会社であっても、設立時の手続きは個人事業の場合とくらべて非常に煩雑。

 具体的には次のような手続きが必要です。

① 定款その他の設立書類を作成

② 法務局に設立登記の申請

③ 税務署に法人設立届出書、給与支払事務所の開設届出書などを提出(法人税・源泉所得税の手続き)

※ 同時に青色申告の承認申請書を提出しておくと、税金の計算が有利になります。

④ 市役所・県税事務所に法人設立届出書、事業所等新設申告を提出(法人住民税・事業税の手続き)

⑤ 年金事務所に健康保険・厚生年金保険新規適用届、被保険者資格取得届を提出(年金と健康保険の手続き)

 さらに、法人を設立すると毎期の法人税申告や代表者自身の給与の年末調整なども行う必要があります。これらの事務手続きを税理士に作成を依頼する場合、依頼費用がかかります。

 第2のデメリットは、ランニングコストが個人事業主より大きくなりやすいこと。

 個人事業であれば事業が赤字のときは所得税が発生しませんが、法人を設立した場合は、赤字であっても年間最低70,000円の法人住民税(均等割)が発生します。

 また、事業が黒字の場合、個人事業による所得に対しては所得税、法人の所得に対しては法人税が課税されますが、一定以下(年間800万円程度が目安といわれます)の所得であれば、個人事業のほうが税額は少なく抑えられる可能性が高いです。

まとめ

 個人事業には、気軽に始められる・事務手続きが簡単というメリットがある反面、保険料の負担が一時的に大きくなったり、法人に比べて社会的な信用が得にくい可能性といったデメリットがあります。

 マイクロ法人を設立した場合、代表者自身の給与を一定にすることで保険料等の負担が平準化され、資金計画を立てやすくなったり、法人代表者として社会的信用が得やすいといったメリットがある反面、事務的な負担やランニングコストは個人事業よりも大きくなる傾向があります。

 特に、設立時や法人税申告などの事務を専門家に依頼すると、その費用が大きく上乗せされるため、そういった事務手続きを自ら調べて解決し、専門家に依頼することなく済ませられる人は、法人設立に向いているともいえるでしょう。

 最後に、保険料と年金負担の観点からは、配偶者等の厚生年金保険の扶養に入ることができるか、という点が非常に重要になってきます。

 

 いかがでしたか?

 ご自身の状況に応じて最適な選択肢をとれると、次の事業展開もスムーズです。

 独立起業を思い立ったときには、ぜひ、さまざまなプランを比較検討してみてくださいね。

 当記事が、新たな一歩を踏み出される皆様のお役にたてるとうれしく思います。

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